気候変動対策の今

2015年「国連気候変動枠組条約締約国会議」にて、2020年以降の気候変動に関する国際的枠組み「パリ協定」が締結されたことなどを契機に、気候変動に対する世界的な取り組みや学術研究が、多数進展しています。G20財務大臣・中央銀行総裁会議の指示により、金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に関しては、2018年12月、経済産業省にて、参考となる事例の紹介や、業種ごとの取り組みへの視点の提供を目的とした「気候関連財務情報開示に関するガイダンス(TCFDガイダンス)」が策定・公表されました。事業運営を100%再生可能エネルギーでまかなうことをめざす組織が加盟する国際的イニシアティブ「RE100」には、日本からも12の組織が加入しています。アメリカ在住の当社の調査員によれば、スタンフォード大学等が中心となって、産学協同で進めてきた「Natural Capital Project」では、生態系が人間の生活にもたらす恩恵を数値化、評価、算出することで、組織や政策の意思決定に活かすためのオープンソースのソフトウェアを作っており、世界各地で活用されているそうです。

また、「Project Drawdown」という、発電や土地利用、都市計画など様々な分野の研究、知見を集めた海外のプロジェクトもあります。「ドローダウン」とはここでは、温室効果ガスが減少に転じることを指しています。80のプロジェクトが紹介されており、その多くでCO2排出量削減量、費用と効果が示されています。フロンなど、冷蔵庫やエアコンの化学冷媒の削減を筆頭に、洋上風力発電、廃棄食料の削減などのほか、女児の教育、家族計画なども挙げられています。経済的、文化的、あるいは安全上の理由で教育を受ける権利が実現できず、意に反した早すぎる結婚や出産をせざるを得ない少女たちの教育は、彼女たちの健康や生活の向上を実現するだけでなく、人口増加の抑制や、教育による自然災害への対応力に結びつき、そのことが温暖化対策につながることも示されています。

このように気候変動対策に今や世界中の英知が結集されており、一種の知のグローバル化が起こっているようです。気候変動は、学際的・国際的に取り組むべき課題であり、その課題への対応が企業活動のESGに、どう顕れ、また競争力につながっているかを見極めるために、「気候変動対策の今」を知ることはアナリストにとって最重要課題です。そこで当社のグローバルな調査員ネットワークが活きてくるのです。

参考:

RE100

http://there100.org

Natural Capital Project

https://naturalcapitalproject.stanford.edu/

Project Drawdown

https://www.drawdown.org

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

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