TCFDの次はCSRD!?

2023年1月、「企業サステナビリティ報告指令(CSRD:Corporate Sustainability Reporting Directive)」が発効しました。これは、2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロという目標を掲げる欧州グリーンディール政策において、実効性のある開示ルールが求められるようになったことから策定されたもので、約5万社にサステナビリティ情報の開示が求められることになります。

これまで、気候変動に関する情報を開示する「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」(2023年4月レポート参照)などもありますが、それに比べるとCSRDは対象範囲が広く、マテリアリティの開示の仕方も変わり、第三者による保証も求められます。日本企業も、欧州にCSRDの適用対象となる子会社があれば、2025年会計までに対応しなければなりません。その際、親会社を含め連結ベースで対応するか、あるいは子会社のみで対応するかを決定し、社内推進体制を構築し、不足している開示情報を準備していくことが必要となります。日本企業も、これまでTCFDへの対応や有価証券報告書でのサステナビリティ情報の掲載など開示を進めてはいますが、CSRD対象企業はさらなる対応が求められることになります。グローバルに事業を展開するためには不可避の取り組みです。

今回のCSRDは、開示内容の詳細は欧州財務報告諮問グループが策定する「欧州サステナビリティ報告基準」により規定されます。TCFDと共通する開示項目もありますが、TCFDが気候変動に特化して企業に与える影響を把握するのに対し、CSRDは生物多様性や循環型経済、従業員、顧客、ガバナンスなど幅広い項目について、それらが企業に与える影響だけでなく、企業が環境や社会に与えるインパクトも把握しなければなりません。

国内においても、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が2024年3月中までにサステナビリティ情報開示に関する草案を策定し、2025年3月中までにはサステナビリティ基準を確定させ、4月より適用する予定と公表しています。そして、2026年3月期の有価証券報告書からSSBJの基準に基づくサステナビリティ開示が開始となる見込みです。

12月13日までドバイで開催されていた「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)」は、2050年に世界全体の温室効果ガスを実質ゼロの達成に向けて、「この10年で、化石燃料からの脱却を加速する」という最終合意文書で閉幕しました。ところが、世界の二酸化炭素排出量は減るどころか増え続けています。

2024年の干支は「辰」ですが、サステナビリティ社会の構築に向けて各社が取り組みを進めることにより、気温ではなく企業価値を、昇龍の如く高めていく新年を期待したいと思います。

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

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