生物多様性の経済効果

2023年4月15~16日、「G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合」が開催されました。そこで、各国が生物多様性に関する新たな経済枠組み「ネイチャーポジティブ経済連盟」を設立し、自然環境や生態系の維持が経済活動に欠かせないとの認識のもと、各国の企業に取り組みを促す方針を示しました。

「ネイチャーポジティブ(自然再興)」とは、生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せることを意味します。日本は、今年3月に「生物多様性国家戦略」を閣議決定しており、2030年までにネイチャーポジティブを実現することをミッションに掲げています。2022年12月に開かれた「国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)」でも、「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」が合意され、「2030年までに自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め、反転させる」と明記されました。

世界経済フォーラム(WEF)が発表した『The Future of Nature and Business』(2020)によると、ネイチャーポジティブ経済への投資と移行によって、2030年までに年間10.1兆ドル(約1150兆円)規模のビジネスチャンス、3億9500万人の雇用創出を見込んでいます。これを踏まえ、環境省の「ネイチャーポジティブ経済研究会」も、2030年に国内で125兆円の経済効果があり、930万人の雇用を支えると試算しています。その内訳は、ビジネス機会の創出が47兆円、サプライチェーンへの波及効果が78兆円としています。そして、2023年度内に「ネイチャーポジティブ経済移行戦略(仮称)」を策定する予定です。これを受け、企業による目標設定や、情報開示に関するガイドラインも作成し、生物多様性に配慮した経営に取り組む企業を支援することを示しました。

2021年6月、自然に関する企業のリスク管理と開示の枠組みを構築することをめざす国際組織「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」が設立されました。これは、企業が自然へ与える影響を開示することを求めるとともに、事業活動を行う上で依存している生態系サービスの開示を要求し、その財務リスクと機会の開示を求めるものです。

いわば、「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」(先月の「サステナビリティ情報の開示義務化」参照)の自然版で、TNFD の完全な提言(v1.0)は、2023 年 9 月に公表される予定です。2023年4月28日現在、TCFDに対して、世界全体では金融機関をはじめとする4,458の企業・機関が賛同を示し、日本では1,306の企業・機関が賛同の意を示しています。先述したWEFは、自然の損失によって世界GDPの半分にあたる44兆ドルが失われる恐れがあると報告しています。環境省の研究会の分析では、日本のGDPの12%が自然への依存度が高いとしており、日本においても生物多様性保全は重要なテーマと言えます。

TCFDやTNFDといった様々な情報開示に対応することは、企業にとって自社の事業活動のリスクと機会を洗い出して理解し、持続可能なビジネスを進めることができるチャンスと言えます。そのような企業に投資することもまた、チャンスと言えるのではないでしょうか。

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

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