「宗教的な市場」?

金融市場について、「効率的な市場」「サステナブルな市場」「グリーンな市場」など、さまざまな言われ方をしますが、ここに来ていよいよ、「宗教的な市場」が出現するのでは?と思わせる動きが出てきました。

さる1月22日にカトリックの総本山であるバチカン(教皇庁)の「人間開発のための部署」は、フェイスインベスト(FAITH INVEST)、UNDPとともに共同イニシアティブとして、人々と地球のためにグリーンで自然に優しい、起業家の視点による宗教投資のオンラインコースを開発し、ほかの宗教グループも、同様のイニシアティブを検討していると発表しました。

ここで言及されているFAITH INVESTの代表マーティン・パーマー氏とこの2月、東京でお会いする機会がありました。神学者であるマーティン・パーマー氏によると、世界的な宗教の資産や影響力が客観的に測られたことは一度もなく、そこで、FAITH INVESTは、宗教団体が保有する資本を世界で初めて算出し、宗教団体の資本を可視化したのです。それによると、世界の約15%の資産は主にイスラム教とキリスト教の宗教団体により保有されており、世界の50%以上の学校や3分の1の医療保健施設は宗教団体により運営され、世界の8%の土地は宗教団体には属さないものの宗教の影響による聖なる場として民間の投資が及ばない場所(例えば富士山)であることが明らかになりました。

昨今、大ブームのESG投資のバックボーンになっている、SRI(社会的責任投資)の考え方はもともと、宗教団体による宗教的価値観を、投資へ反映をさせるということでした。ですから、宗教的な投資というものはめずらしくないのですが、FAITH INVESTのような世界横断的な組織ができたところに、新しさがあります。

FAITH INVESTは世界中の宗教団体をネットワークし、共通の投資ガイドラインを策定、また運用担当者の教育・訓練を行い、宗教の持つ投資パワーを集約し、極大化することで、地球のサステナビリティに、ポジティブなインパクトを与えるための強力な援軍なのです。

2020年8月には、福岡県宗像市での国際会議が予定されています。神道の宗像大社がホストとなり、フィリピンのキリスト教、インドネシアのイスラム教、中国のタオイズム、インドのヒンズー教などのアジアの宗教団体を集結させて、持続可能な社会に向けて宗教の力を活用した積極的な投資を呼びかけるそうで、今後の展開が注目されます。

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

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