「負ふた子に教えられ」とか「後生おそるべし」などという言葉があるように、子どもや若者は社会にとって新しい視点や発想をもたらしてくれるものです。SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットで採択された、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するための国際目標です。貧困や環境問題の解決など持続可能な世界を実現するための17のゴール、169のターゲット、232の指標から構成されています。
電通の2021年1月の調査では、SDGsという言葉の認知率は54.2%で、1年前の29.1%から倍増しました。一方、「内容まで含めて知っている」のは20.5%に留まっています。年代別では、10代のSDGs認知率が7割を超えて最も高く、60代、70代の認知率が低いものの、コロナ禍を経てSDGsへの関心が高まっています。実は子ども達の世界でも、SDGsへの関心が高く、理解も深いのではと気が付いたのは、当社の女性アナリストとの会話からでした。
アナリストの子供が通う、神奈川県の保育園では、保育園・幼稚園向けSDGsプログラムを使い始めたことと、若い女性保育士がSDGsに興味があったことがきっかけで、SDGsについて園児たちにディスカッションさせています。肌の色は黒いままの人がいる、朝は水汲みをするお友達がいる、など海外の国の人や生活に興味が高まっており、オンラインで一緒にゲームをしたり、言葉を教わったり、手紙のやりとりをして交流を楽しんでいます。LGBTQを取り上げた際、「女の子どうし、男の子どうし好きになるのは変?」との先生の問いに、「全然変じゃない、好きならそれでいいじゃん」という子供たちの答えに驚きました。ゴミ問題を話し合った後は、それまで捨てていた折り紙の切れ端を、次の工作に使えるように取っておくようになりました。
東京都品川区の小中一貫モデル校では、従来の道徳や特別活動などを統合した独自の「市民科」という教科に力を入れており、そこでSDGsや環境問題について、授業で取り上げています。別のアナリストの子供が通う埼玉の小学校では取り組みがなかったものの、その隣の小学校では「総合的な学習の時間」の課題として、SDGsを取り上げていることが子ども達の間で話題になっていたそうです。ヒアリングを行った保育園や小学校、中学校の中には、SDGsについて学んだことはないというところもあり、きっかけがなければ取り上げないのかもしれません。
企業のSDGsへの理解、ESGへの取り組みに差があるように、子ども達の間でもSDGsに対する理解の格差が広がるのは残念なことです。子どもの時の感性がやがてその人の生き方を左右することを考えると、幼い時からSDGsの精神を感得するような教育が重要であり、その可能性を感じさせる保育園のエピソードでした。
参考:
(電通Team SDGs「SDGsに関する生活者調査」)
株式会社グッドバンカー
リサーチチーム