どのような未来に投資をするのか

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が公表した2024年の世界の軍事支出調査によると、2024年の世界の軍事費は前年から9.4%増加し、過去最高の2兆7180億ドル(約398兆円)に達しました。その中で、日本は、553億ドル(8兆3700億円)で前年比21%増と急増しましたが、前年と同じ世界10位でした。現在、ハマスと紛争をしているイスラエルは世界12位で、日本よりも下位ですが、その支出は前年比65%も増加しています。

ロシアは世界3位で前年比65%増、ウクライナは8位で、他国がGDPに占める軍事支出の割合が一桁台なのに対し、34%と突出しています。長引く戦争が、軍事費を押し上げていることが一目瞭然です。SIPRIは、現在の傾向が続けば2035年には6.6兆ドルに達すると予測しています。

今年9月、国連事務総長の報告書『The Security We Need: Rebalancing Military Spending for a Sustainable and Peaceful Future(私たちが必要とする安全保障:持続可能で平和な未来のために世界の軍事支出の再調整を)』が発表されました。

その中で、貧困対策などの持続可能な開発に必要な資金が不足していると指摘し、世界の軍事費の4%にも満たない930億ドルがあれば、2030年までに世界の飢餓を終わらせることができるとして、加盟国に対し、安全保障と開発の優先順位を再調整するよう要請しています。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は記者会見で、「軍事支出のほんの一部を振り向けるだけで、格差を埋めることができる。子どもたちを学校に通わせ、医療体制を強化し、最も弱い立場の人々を保護することができる」と訴えました。

いくつかの推計によると、軍事に1ドルを費やした場合、民間部門に1ドルを支出した場合と比べ、温室効果ガスの排出量が2倍になるとされています。先月号で、SDGsのゴールは達成されないとの見込みについて書きましたが、軍事費の増加とSDGsの達成は反比例していると言えます。逆に、地球温暖化とは比例しているとも考えられます。

ESG投資の歴史を遡ると、今はESGに対して風当りの強いアメリカで、1960年代にベトナム戦争に反対して軍需産業への投資をボイコットする運動がありました。しかし、トランプ政権の誕生や、ロシアとウクライナの戦争を経て、エネルギーの安定供給や安全保障の重要性の高まりにより、ESG投資の基準も変わりつつあります。

私たちはどのような未来を望むのか、そのためにどのような企業に投資するのか――。多くの企業が2030年、2050年をターゲットとするESG目標を掲げていますが、投資家としても、中長期的な未来を見据えた投資を行っていくことが必要ではないでしょうか。

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

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