『E・S・G』における企業統治の重要性が一層高まる

上場企業における企業統治のあるべき規範として、金融庁と東京証券取引所が規定している「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」が、今年の6月に3年ぶりに改訂された。東京証券取引所では、現行の4市場を2022年4月から「プライム市場」、「スタンダード市場」、「グロース市場」の3市場に再編する為の上場区分の議論が進んでいるが、そこでも時価総額、流通株式総数とならんで高度の「企業統治」のあり方が求められている。

今回の「コーポレートガバナンス・コード」の改訂が、企業統治・経営形態のあるべき方向性として、「モニタリング・モデル」への移行を促していることから、今後の企業統治の形態は

「業務執行と経営監督の一層の分離と強化」、「外部有識者・第3の眼によるマネジメント&ガバナンスのチェック」という観点がより強化されていくことになろう。ある程度の規模の企業であれば、“監督(モニタリング)”と“取締・監査”(ガバナンス)”においては、外部からの人間が主導する一定水準以上の質的・量的な態勢が構築されていることが求められていく。

『E・S・G(環境、社会、企業統治)』という社会・企業の評価軸が認知度を高めてきていることに合わせて、世界的な潮流として最近明らかになったことが2点ある。

ひとつは、地球環境を保持・改善するマインドが一層高まってきたことから、産業構造の転換を推し進めていかねばならず、個別企業においても「脱炭素」の重要命題にどのように取り組むべきなのか、経営方針と対応戦略を明らかにすることが一段と求められている。

今ひとつは、「ダイバーシティー(多様性)」に関して、世界は一段と寛容・容認の方向に向かっていることから、企業としても旧態依然たる男性優位、単民族固執、優越性重視などのモノカルチャーから、「人権の尊重」、「女性、外国人、マイノリティーなど従来劣勢に置かれていたグループへの配慮」という、多様性と受容性にウェイトを移す意識転換が求められている。

「コーポレートガバナンス・コード」とは、このような「E(環境)」、「S(社会)」の連続的な経営環境の変化に対応する為に、「G(企業統治)」の有り様を修正・拡充することなので、今回の改定は平仄が合っていると評価される。

QUICKが発表した7月の株式月次調査では、今回の東証による「コーポレートガバナンス・コード」の改訂については、約8割の投資家が「評価できる」または「やや評価できる」と好意的に評価している。

大手電機メーカーの長年にわたる「検査不正問題」で明らかになってきたように、企業の縦割り組織、前例主義、公的需要への高い依存度、などの歴史的・構造的な体制が、企業改革と社内統治(コーポレートガバナンス)強化への妨げとなってきていることが多い。

今回の事例では、決算発表、株主総会の為の取締役会での議論と対処策に疑義が出てきている。問題が発覚したのが定時株主総会の直前というタイミングだったので、株主への説明責任と総会運営が適切・適合だったのかという社外取締役の果たすべき責務が議論を引き起こしている。 12人の取締役のうち社外取締役は5名で過半数以下であるが、指名委員会と監査委員会の委員長は社外取締役が担っている。検査不正問題への対応や、働き方改革の進み具合とともに、今後は社外取締役の絶対数が増員となるのか、監督責任と権限・機能が一段と強化されるコーポレートガバナンスが進展するのか、注目して見守っていきたい。

(c)株式会社グッドバンカー
顧問
田淵英一郎

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