2001年、オーストラリアのメルボルンで発足した「サステナビリティ・ストリート・プロジェクト」は、演劇を通じて環境問題について子供達に教えていた「Vox Bandicoot」劇団が始めた取り組みです。このプロジェクトでは、「サステナビリティ・ストリート」と指定された場所に住む人々が、ゴミの処理からリサイクル、ガーデニング、エネルギーや水使用について、自分の家や近隣地域において、持続可能な生活を過ごすためにどのような取り組みをすればいいかを8回にわたるトレーニングの中で具体的に教わり、それを実践していきます。現在、ニューサウスウェールズ州とビクトリア州にある150の地域社会が参加しています。
「サステナビリティ・ストリート」とは、ストリートだけでなく、学校やスポーツクラブなど人々が集まる場所にも当てはまる概念です。ある学校では、1,000本のオーストラリア固有の植物を学校の敷地内に植樹し、CO2排出量をオフセット(相殺)したほか、家庭科で使用する野菜やハーブを育てるなどの取り組みを生徒たちが始めました。驚いたことに「サステナビリティ・ストリート」を導入した場所では、家庭ごみを18%削減、水使用を26%削減(年間20万L相当)、エネルギー使用を18%削減(120tの温室効果ガス相当)という結果となりました。さらに、環境だけでなく、実施したストリートに住む人々の繋がりを強める効果もあったとのことです。今まで、ほとんど挨拶も交わさなかった近所の人達との付き合いが深まった、子供たちが安全に遊ぶような地域社会が戻ってきたなどの声もあり、またオーストラリアでは欠かせない芝刈り機を近所で共有したり、自分たちが所有する本のリストをイントラネットに載せて近所の人たちと交換するなど、お互い協力し合って自ら持続可能な地域社会を築き上げていく様子が見られたそうです。
現在、ブリスベンやパースなど、他の都市でも導入予定のこのプロジェクトは、英国や中国の関係者も興味を示しており、近々英国で試験的に導入される予定です。一つのストリートから始まり、地域社会に住む人々が自らできることを積極的に行い、思いがけない効果を得た同プロジェクトは、今後世界の様々な地域社会へと広がり持続可能な社会を築き上げる一つのモデルケースとなるのではないでしょうか。
※参考資料:シドニーモーニングヘラルド紙 2008年6月4日“Saving the World ? One street at a time”