ウクライナ侵攻とESG投資

2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以来、ロシアからの欧米企業の撤退が相次いでいます。アメリカのエール大学の調査では、既に300社を超える企業がロシアにおける事業を撤退、または縮小していると報告されています。そこには、多くの名だたるグローバル企業が名を連ねています。事業撤退の理由は、「戦争による人権被害」。人権問題に対して敏感な欧米企業は、侵攻直後から動き始めました。また、年金基金などの機関投資家からロシア事業の停止を呼びかけるなど、投資家のはたらきかけも企業の判断に影響したと思われます。現実に、ロシアで事業継続を表明した企業の株価は下がり、停止を発表後に戻すなど、パフォーマンスにも明確に影響しました。

ロシアで50店舗を展開している日本のアパレルメーカーは、消費者に生活必需品を提供することを使命として営業を継続すると宣言していました。その一方で、およそ1000万ドルをUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)に寄付し、毛布や防寒着など約20万着を難民に提供するという、日本企業では最大規模の支援も発表していました。にも関わらず、多くの非難を受けることになったのです。結局、わずか数日後にロシアでの事業を一時停止することを発表しました。ロシアでの事業活動継続を表明することが、企業にとって悪影響をもたらすことになっています。日本企業も、ロシアでの事業活動を見合わせる動きが見られました。

日本はロシアとの間に、エネルギー開発事業などエネルギーの安定供給や安全保障の観点から、難しい判断を迫られる案件も抱えています。

このような状況の中で、ESG投資の観点から何を評価するのか――。

デンマークのある年金基金は、「良き企業市民であるには、政府の制裁方針を順守するだけでなく、制裁対象外の事業を停止することも必要となる」と指摘しています。

ロシアでの事業を停止した飲食店などを含む海外の小売の中には、継続的に賃金は支払うことを発表している企業もあります。難民受け入れを表明している日本企業もあります。また、ECサイトを運営する日本企業は、ウクライナへの人道支援チャリティーTシャツを販売し、売上の全額をNPO法人に寄付すると発表。販売開始3日間の売上が、総額1億7000万円に達しました。 国際政治と企業のビジネス展開は、もはや不可分の関係となっています。ESG投資の観点からの企業評価に際しては、ネガティブな側面から投資を除外するだけでなく、企業のポジティブな活動を評価していくことも重要であると当社は考えます。

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

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