2024年4月より、トラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告知が適用されました。これによりドライバーの労働時間が短くなり、輸送能力が不足することを、「物流の2024年問題」と言います。経済産業省が国土交通省、農林水産省と共に立ち上げた「持続可能な物流の実現に向けた検討会」が発表した最終とりまとめでは、何も対策を行わなかった場合には、営業用トラックの輸送能力が2024年度には14.2%、2030年度には34.1%不足すると見込んでいます。物流・運送業者が受ける影響としては、利益や売上の減少、残業代削減が起因の収入減によるドライバー不足などが指摘されており、荷主側は物流コストや輸送時間の増大といった影響が考えられます。
「2025年問題」とは、国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)の超高齢化社会を迎えることで、雇用、医療、福祉といった日本経済や社会の広い領域に深刻な影響を及ぼす諸問題のことです。内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、日本の総人口1億2,495万人のうち65歳以上の人口は3,624万人(29.0%)であり、並行して少子化も進んでおり、労働人口の減少も深刻な課題となっています。これらは、社会保障費の負担増大のほか、医療・介護体制維持の困難化、労働力の不足といった影響をもたらします。
一方、IT関連では、経済産業省が2018年に公開した「DXレポート」で提唱した「2025年の崖」と言われる問題があります。これは、日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進まず、老朽化したシステムを使い続けることで業務の効率性が損なわれ、2025年以降、日本において年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるというものです。
これらの問題も、「物流の2024年問題」とは別にはなりません。トラックドライバーの平均年齢は年々上昇しているほか、配車システムの導入率の低さも指摘されています。ドライバーの確保については、女性や特定技能外国人を含めた採用、育成が注目されており、そのための業務の標準化なども必要になります。
いよいよ迎える2025年――。
「2025年問題」も「2025年の崖」も、日本社会全体が抱える大きな課題です。それに対し、各社がどのような対応をしていくのかは、その企業の成長性に直結すると言えます。多様な人材の確保やDX人材の育成といった取り組みは、早くからその必要性を感じていた企業は既に対策を講じています。そしてそれは、ESG経営における「S:社会」への取り組みに他なりません。社会の変化に柔軟に対応し、加えて社会が抱える問題にソリューションやイノベーションをもたらすことのできる企業こそ、投資妙味があると言えるのではないでしょうか。
株式会社グッドバンカー
リサーチチーム