2022年2月、「2022年北京オリンピック・パラリンピック競技大会」が開催されました。今大会には、外交使節団を派遣しない外交的ボイコットを表明する国が相次ぎ、日本も政府関係者の派遣を見送る方針を決めました。このような外交的ボイコットの背景には、中国政府による新疆ウイグル自治区などでの人権侵害があります。今、人権問題に対しては、世界から厳しい目が向けられています。
それは企業に対しても同様です。2021年1月、アメリカで、ある日本企業の製品が輸入を差し止められました。先の新疆ウイグル自治区での人権侵害により、ウイグル産綿などを対象とする輸入禁止措置に違反したとするもので、企業の事業活動における原材料の調達での人権への配慮までが強く求められています。
また、ミャンマーで軍事クーデターが起こって以降、日本を含めミャンマーに進出する外国企業に対し、軍事政権を資金面で支えないようビジネスの見直しを求める声が強まっています。ミャンマーの民主化を支援するNGOは、軍事政権と関係があるという日・米・欧などの上場企業をリストアップし、機関投資家に対して保有株式の売却を求める声明文を発表しました。ある日本企業は、国軍系企業との合弁事業の提携解消に向けた協議を行っています。これらの動きは、直接的に企業の経営や業績に影響するものであり、ESGの「S」(社会)への未対応が事業のリスクのみならず、利益リスクやステークホルダーとのリレーションリスクとなるわかりやすい事例と言えます。
先日、ミャンマーで事業活動を行う企業に対するESG投資家の考えについて、アジア各国・地域での経済ビジネス情報を配信するメディアから取材を受けました。同国で事業活動をする上で、企業はどう対応しなければならないのかという内容でした。
ミャンマーに対しては、欧州の機関投資家は早くから注視しており、同国で事業活動を行う企業へは投資しないことを決めているところもありました。しかし当社では、海外投資家から日本企業のミャンマー事業について質問を受けた時、実際の活動の内容を精査し、ある日本企業のミャンマーとの関わりが、実は麻薬の原料の代わりに漢方を栽培することで、現地の人々の生活を改善させていることを報告しました。その結果、同社は投資先に認定されたのです。 投資家は、こうした社会的リスクを考慮しながらも、適切に対応を行っている企業には投資をしていくことが、パフォーマンスにも影響するものと見ています。それを見極める判断基準となるのが「ESG」であり、企業のESG活動を精査し、投資家に正しく伝えるのが当社の役割です。
株式会社グッドバンカー
リサーチチーム