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有機農業立国キューバAugust 2003
食品の安全や安心が声高に叫ばれる昨今、農薬や化学肥料を使わずに生産した有機農産物への注目が世界的に高まっています。しかし、有機農産物は殺虫剤や除草剤などを使用しない分、人の手間がかかり、値段が高くなりがちです。そのため、有機農産物は、手間暇のかかる贅沢品にプレミアムを支払う一部の消費者のためのものという理解が一般的です。ところが、国民みんなが有機農産物を食べている国があります。そんな贅沢な国とは一体どこでしょうか? それはキューバなのです。 キューバは、一般的に、経済的に余裕のある国とは考えられていませんが、実は有機農法に関して世界でもトップレベルにあります。今年の5月に首都ハバナで有機農法に関する会議が開かれた他、キューバの有機農法技術を学びに行くツアーが組まれたりしています。しかし、1989年までのキューバ経済は、共産圏ブロックの一国として旧ソ連から農薬や化学肥料などの物資を得て、砂糖や葉巻などの換金できる作物を生産・輸出し、その代金で食糧を輸入しており、有機農法とはほど遠い状態でした。食糧の多くは輸入され、主食の豆や油に至ってはその9割以上が輸入されていました。このように、輸入依存度が高かったキューバ経済は、1989年にソ連邦が崩壊した際に大打撃を受けました。農業に必要な肥料や農薬の輸入量は8割も減少してしまいました。そして、食糧の輸入も半減し、栄養不良の人口は5%から20%に増加した他、石油の輸入も半減しました。 この食糧危機を乗り切るためにキューバが選んだのが、食糧だけでなく、食糧生産のために必要なもの全てを現地で調達することでした。キューバの科学者たちは次々と従来の方法に代わる農法を開発提案しました。例えば、害虫の管理に関しては、従来輸入していた殺虫剤の代わりに微生物を利用して害虫を除去する方法を考案しました。また、化学肥料の代わりに現地で調達できる牛の糞や人糞、家庭の残飯などを肥料として使用しました。従来使用していたトラクターは旧ソ連製のもので部品も燃料もなくなったので、代わりに牛を利用した畑の耕運を始めました。その他、食糧不足を補うために農地の拡大を奨励し、都市部では駐車場や空き地などが次々と畑に変わっていきました。強力な政府のサポートのもと、現地調達の方針を続けた結果、いわゆる有機農法に行き着いたのです。 キューバで有機農法を推進してきた「Grupo de Agricultura Organica」(GAO:有機農法協会)は、有機農法が食糧安全保障と環境問題解決の鍵であることを世界に示したとして、1999年に「Right Livelihood Award」を受賞しました。この賞は、もう一つのノーベル賞と言われ、毎年、生活を健全なものとし、われわれの住む地球の負っている傷をいやし、ヒューマニティを高めるのに貢献したビジョンと仕事に対して贈られる賞であり、キューバの農業が世界中の注目を浴びていることがわかります。 有機農法では人々を食べさせることはできないとよく言われますが、必要に迫られて有機農法に辿り着いたキューバの例は、有機農業の可能性とそのことがいわゆる国の競争力につながる、「有機農業立国」を示唆しているのではないでしょうか。 |
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