株式会社グッドバンカー
ワールドエコレポート

「ここに陸終り、海始まる」 ~洋上発電の世界 ~

March 2005

「ここに陸終り、海始まる」
これは、ポルトガルの詩人カモンイスの1572年の詩、「ウス・ルジアダス」からの一節で、日本の風力発電の権威である牛山先生が、今後の風力発電の方向性についてお話しされる時、よく引用されるフレーズです。もともと、15世紀末に大海原に乗り出し、大航海時代を切り開いた、ヴァスコ・ダ・ガマの偉業をたたえたものだそうで、ヨーロッパ最西端にあるポルトガルのロカ岬にある碑に刻まれています。実は、筆者も30年前にこの碑を訪ねたことがあります。ポルトガルは、航路を開拓したことによって貿易の富を独占し、極西の小国から一挙にヨーロッパに覇をとなえる大国になるわけですが、ガマやマゼランを支援して航路を開拓させたのは、エンリケ航海王子でした。海に突き出た岬の先端に、このエンリケ航海王子の銅像と、この詩の刻まれた碑があるのですが、目の前には、茫漠たる海が広がり、足もとは断崖絶壁、荒れ狂う風で海が泡だっています。「ここは世界の果て、この先では、海が滝のように落下して、地獄が待っている」と当時の人が信じたのもわかる気がしました。そのような時代に、勇気を持って航海に乗り出した航海者たちと、それを支援したエンリケ航海王子のリーダーシップが世界史の新しいページを開き、ポルトガルを大国にしたのです。洋上発電も、今後、風力発電の世界に新しいページを開くのでしょうか。

実は、すでに国内の電力需要の約17%を風力発電でまかなっているデンマークで興味深い動きがあります。北海道より狭い国土に約6,500基もの大型風車が林立し景観や騒音の問題が出てきて、陸上に新たな風車の設置が禁じられています。このため海への進出が始まり、最近では、2メガワット風車が80基も並んだ大規模な洋上風力発電設備が2箇所も設置されました。他にも、イギリスでは、2004年に1メガワットの洋上風車が700本建ち、ドイツでは、 2005年に1,200本、2006年には1900本建てると言われています。日本の風力全体が700メガワット程度であることを考えると、いかに諸外国で、急速に洋上発電が進んでいるかがわかりますね。

一般的に、海に出ると、風そのものが強くなると同時に、安定してくると言われ、また、洋上風車の土台が海底で漁礁のように働いて、海洋生物が生息したり、浅い海域で目印となって、船の航行を助けるとか、さらに、観光資源になるなどの付加価値がつくという意見もあります。海に囲まれた広大な海岸線を持つ日本は、実は、洋上発電にとってはきわめて恵まれた立地条件なのかもしれません。

牛山先生は、造船業の伝統を持ち、海上油田のリグなど、洋上に構築物を建設するすぐれた技術を持っている日本が、洋上風車の分野でも競争力を持った製品を生み出せるのではないかと期待しておられます。今後、日本で洋上発電を促進し、技術を蓄積することが、世界に貢献し、日本のプレゼンスを高めることになるかもしれません。ただし、「ここに海始まる」ためにも、そのかみのエンリケ航海王子のようなリーダーが待たれる日本です。